AIで仕事がなくなる時代、キャリアコンサルタントの仕事は増える?

2026.9.3

最近、生成AIが急速に広がり、仕事の中でもAIを身近に感じる場面が増えてきました。

文章を作る、情報を調べる、考えを整理する。これまで人が時間をかけて行っていたことを、AIが短時間で支援してくれるようになっています。その便利さを実感する一方で、「これから仕事はどう変わっていくのだろう」「人が担う役割はどうなるのだろう」と、私自身もいろいろと考えさせられています。

特に気になるのは、AIによって仕事が変化したとき、働く人のキャリアにどのような影響が生じるのかということです。

では、仕事の変化が大きくなると、キャリアコンサルタントの仕事は増えるのでしょうか。それとも、キャリア相談もAIに置き換えられていくのでしょうか。

今回は、AI時代にキャリアコンサルタントが担う役割について考えてみたいと思います。

AIで「仕事そのもの」が一斉になくなるわけではない

AIについて考えるとき、まず区別しておきたいのが、職業がなくなることと、職業の中にある一部の業務が自動化されることです。

例えば、事務職であれば、文書の作成、情報の整理、データ入力などの一部はAIによって効率化される可能性があります。しかし、関係者との調整、例外的な事態への対応、相手の事情を踏まえた判断まで、仕事のすべてが同時になくなるとは限りません。

国際労働機関(ILO)とポーランドの国立研究機関NASKが2025年に公表した調査では、世界の雇用の約4分の1が生成AIの影響を受ける可能性があるとされています。一方で、同調査が示している重要な点は、最も起こりやすいのは仕事の全面的な代替ではなく、仕事内容の変容だということです。

そのため、「AIの影響を受ける仕事=なくなる仕事」と受け取らないことが大切です。

なくなる仕事より、変わる仕事の方が多い可能性

世界経済フォーラムの「Future of Jobs Report 2025」では、技術革新や人口動態などの変化により、2030年までに世界で1億7,000万件の新しい仕事が生まれ、9,200万件の仕事が失われると予測されています。差し引きでは7,800万件の増加です。

ただし、これは将来を確定する数字ではなく、世界55カ国・地域の1,000社を超える雇用主への調査に基づく予測です。また、日本だけを対象にした予測でもありません。

同報告書では、2030年までに仕事で必要となるスキルの約4割が変化すると見込まれています。AIやビッグデータなどの技術的なスキルだけでなく、分析的思考、創造的思考、柔軟性、リーダーシップ、協働といった人に関わる力も、引き続き重要になるとされています。

つまり、これから起こるのは、単純な「人からAIへの交代」だけではありません。人がAIを使いながら、担当する業務や必要な能力を組み替えていく変化だと考えられます。

仕事が変わるほど、キャリアの悩みは複雑になる

仕事内容や求められる能力が変わると、働く人には新たな悩みが生まれます。

  • 今の仕事をこのまま続けてよいのか
  • どのようなスキルを学び直せばよいのか
  • これまでの経験は別の仕事でも生かせるのか
  • 社内で役割を変えるのか、転職するのか
  • AIをどこまで、どのように仕事に取り入れるのか

こうした問いには、すべての人に共通する一つの正解がありません。年齢、経験、生活状況、価値観、所属する会社や業界によって、選択肢は変わります。

厚生労働省委託の「キャリア形成・リスキリング推進事業」でも、キャリアコンサルティングを通して、個人の主体的なキャリア形成やリスキリングを支援しています。国の事業においても、学び直しとキャリアについて考える支援が一体的に進められていることが分かります。

AIによってキャリアコンサルタントの需要が必ず増えると、現時点で断定することはできません。しかし、仕事や必要な能力の変化が大きくなるほど、自分の経験を整理し、今後の方向性を考える支援の必要性は高まると考えられます。

AI時代にキャリアコンサルタントが担う4つの役割

1.漠然とした不安を整理する

「AIに仕事を奪われるかもしれない」という不安だけでは、次の行動を決めることはできません。

どの業務が変わりそうなのか、自分は何を大切にしたいのか、現在の職場でできることは何か。対話を通して問題を具体化することが、キャリア支援の出発点になります。

2.経験や強みを言葉にする

同じ職種を長く経験してきた方ほど、自分の能力を会社や職種の名前だけで捉えていることがあります。

しかし実際には、相手の要望をくみ取る力、調整する力、判断する力、人を育てる力など、別の環境でも生かせる能力があります。相談者が自分では気づいていない経験や強みを一緒に整理することも、キャリアコンサルタントの重要な役割です。

3.学び直しを「目的」ではなく「手段」として考える

AI時代だからといって、誰もが同じデジタル資格を取ればよいわけではありません。

まず、これからどのように働きたいのかを考え、そのために不足している知識や技能を確認します。そのうえで、必要な学習や訓練を選ぶことが大切です。リスキリングそのものを目的にせず、その先のキャリアと結び付けて考える支援が求められます。

4.本人が納得できる意思決定を支える

AIは、職業情報の検索や選択肢の比較、応募書類のたたき台作成などに活用できます。しかし、どの人生を選ぶかを決めるのは本人です。

迷いや葛藤を抱える相談者の話を聴き、考えを深め、本人が納得して一歩を選べるように支えることは、これからもキャリアコンサルティングの中心にあると考えます。

キャリアコンサルタント自身もAIを使う側へ

キャリアコンサルタントも、AIの影響を受けないわけではありません。

職業情報の収集、資料の要約、研修案の作成、文章作成など、AIを活用できる場面はすでに増えています。これらを効率化できれば、相談者との対話や支援の検討に、より多くの時間を使えるようになります。

一方で、AIが出した情報には誤りや古い内容が含まれることがあります。個人情報や相談内容の取り扱いにも注意が必要です。AIの回答をそのまま相談者に渡すのではなく、情報源を確認し、相談者の状況に照らして判断する専門性が欠かせません。

これからは、AIを使わないことよりも、AIに任せる部分と、人が責任をもって関わる部分を見極める力が重要になるでしょう。

人にしかできない支援とは何か

「人にしかできないこと」を、単に「共感」や「コミュニケーション」という言葉だけで終わらせないことも大切です。

相談者の言葉の背景を理解し、迷いや沈黙も含めて丁寧に関わること。相談者が置かれている環境を踏まえ、すぐに結論を出さず、一緒に考えること。そして、相談者自身が気づき、選び、行動できるように支援すること。

こうした関わりには、キャリアに関する知識だけでなく、面談技法、倫理、自己理解、継続的な学習が必要です。

AIが発達するほど、人が対応すべき相談は、より複雑で個別性の高いものになる可能性があります。だからこそ、資格を取得するだけでなく、相談者を支える実践力を身につけ続けることが必要です。

まとめ

AIによって、すべての仕事が一斉になくなると決まったわけではありません。現在の調査から読み取れるのは、多くの仕事で業務内容や必要なスキルが変わり、学び直しや役割の転換が必要になる可能性です。

そのような時代には、働く人が自分の経験や価値観を整理し、変化する環境の中で次の選択を考える機会が、これまで以上に重要になります。

キャリアコンサルタントの仕事が自動的に増えるとは断定できません。しかし、AIでは完結しにくい複雑な相談に対応し、AIも適切に活用しながら意思決定を支援できるキャリアコンサルタントには、重要な役割があると考えます。

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参考資料

※本記事で紹介した将来の雇用数やスキル変化は、各機関の調査に基づく予測であり、将来を確定するものではありません。

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