2026年度前期のキャリアコンサルティング技能検定2級について、
キャリアコンサルティング協議会から
「2026年度前期 2級実技試験 採点官、面接試験官から観た受検者の傾向」
が公開されました。
この資料は、実技試験の採点を担当した採点官・面接試験官へのアンケートをもとに、
受検者全体の傾向をまとめたものです。
資料の冒頭にも記載されているとおり、
個々の受検者の課題や合否理由を示したものではありません。
あくまで受検者全体の傾向として示されたものです。
ただし、実際に採点を担当した側から、
「どのような答案ができていたのか」「どのような点が課題として見られたのか」
が具体的に示されています。
これからキャリアコンサルティング技能士2級を受検される方にとって、
論述対策を考えるうえで非常に参考になる資料だと思います。
今回は、この公式資料のうち
「実技(論述)試験の傾向」について、
問1から問4まで順番に詳しく見ていきます。
■ 今回の資料は公式サイトから確認できます
今回取り上げる「採点官、面接試験官から観た受検者の傾向」は、
キャリアコンサルティング協議会の
「過去問題/学習情報」のページから確認できます。
公式サイトでは、過去に実施した3回分の検定試験が公開されています。
また、2級の「実技の傾向」については前期のみ掲載と案内されています。
新しい試験回の情報が追加されると過去3回の掲載範囲も更新されていくため、
受検予定の方は、参考にしたい資料が掲載されているうちに確認しておくとよいでしょう。
この記事で解説する内容
- 問1|相談者がこの面談で相談したかったこと
- 問2|キャリアコンサルタントとして考える相談者の「問題」
- 問3|相談者を援助するための目標設定
- 問4|目標を実現するための具体的な方策
- 論述試験で指摘された文章表現・要約力
- 今回の論述試験全体から見えてくること
2026年度前期・2級「実技(論述)試験」の傾向
今回の資料では、論述試験について
問1、問2、問3、問4のそれぞれに、
できていた点と課題の両方が示されています。
すべてを通して読むと、
単に「決まった書き方を覚える」だけではなく、
目の前の事例に即して相談者を理解することが
非常に重要であることが見えてきます。
問1|「相談者がこの面談で相談したかったことは何か」
まず問1です。
今回の採点官からのコメントでは、
相談者や事例の重要なポイントをしっかり捉え、
具体的にまとめられている解答が多かったとされています。
相談者の訴えを漏らさず理解しようとする姿勢についても、
肯定的に評価されています。
一方で課題として挙げられているのが、
相談者の置かれた状況や、来所した背景まで十分に整理できていない解答です。
さらに、
相談者の悩みや迷いに十分目を向けず、
表面的な出来事だけで問題を捉えている解答
も一部に見られたとされています。
問1で考えたいこと
たとえば相談者が
「転職するかどうか迷っています」
と話していたとします。
そこで単に、
「転職について相談したい」
とまとめるだけでは、
相談者が本当に相談したかったことまで十分に捉えられていない可能性があります。
なぜ転職を考えているのか。
なぜ迷っているのか。
どのような背景があるのか。
何に悩み、何を大切にしているのか。
相談者が口にした出来事だけではなく、
その背景や思いまで含めて理解することが大切です。
問2|キャリアコンサルタントとして考える相談者の「問題」は何か
問2では、
キャリアコンサルタントとして事例にしっかり向き合えていると感じられる解答が
数多くあったとされています。
その一方で、今回かなり印象的な指摘があります。
それが、
相談者の発言を定型的な枠組みに無理に当てはめようとして、
「証拠探し」のようになっている記述
が見られたという点です。
そのような場合には、
相談者自身の気持ちが見過ごされ、
結果として相談者を「ダメ出し」しているような問題把握になってしまうことも
指摘されています。
「証拠探し」の答案になっていませんか?
論述対策をしていると、
- 自己理解不足
- 仕事理解不足
- 情報不足
- コミュニケーション不足
といった言葉を使うことがあります。
もちろん、こうした視点そのものが問題ということではありません。
注意したいのは、
最初から「この人は自己理解不足だ」などと答えを決めて、
相談者の発言の中から、それを裏付ける材料を探してしまうことです。
今回の事例では、
体調についての心配も抱えている相談者である一方、
「自分の力を発揮してみたい」という思いを持って来談している点にも
目を向ける必要があることが示されています。
つまり、
相談者の「できていないこと」だけを探すのではありません。
「この相談者は、何に悩み、何を望んでいるのだろう」
という視点から、
相談者の思いや状況を広く捉えていくことが必要です。
問3|相談者を援助するために、どのような目標を設定するか
問3については、
問2で相談者の課題にしっかり向き合えている場合には、
無理のない目標設定ができていたとされています。
ここからも、
問2の問題把握と問3の目標設定は別々のものではなく、
つながっていることがわかります。
一方で課題として示されているのが、
- 「価値観の明確化」
- 「中長期のキャリアプランを立てる」
といった、
一般的・抽象的な表現だけで終わっている目標設定です。
こうした言葉は一見すると、
キャリアコンサルティングらしい目標に見えます。
しかし重要なのは、
「なぜ、この相談者に、この目標なのか」
ということです。
さらに、
その目標が相談者にとって実際に取り組めるものなのか、
実行可能性を考えることも必要です。
問2で把握した問題
↓
問3で設定する目標
ここがきちんとつながっているか、
論述答案を振り返るときには確認してみてください。
問4|問3の目標を実現するための「具体的な方策」
問4については、
一つの方法だけではなく、
多角的な視点から方策を提示できている受検者が多かったと評価されています。
一方で採点官が気になった点として、
その方策が相談者の今後の具体的な行動につながっているのか
という問題が挙げられています。
特に、
ジョブ・カードなどのツールを挙げているものの、
- そのツールを使って何をするのか
- 相談者の何を整理するのか
- その後の支援にどう生かすのか
といったところまで、
十分に具体化されていない解答が見られたとされています。
「ジョブ・カードを使う」で終わらない
大切なのは、ツールの名称を書くことではありません。
何について整理するために使うのか。
どのように使うのか。
その結果を、その後の支援にどうつなげるのか。
そこまで考えて初めて、
相談者の具体的な行動につながる方策になります。
また、
「何について、どのように関わるのか」が具体的ではなく、
どの相談者にも当てはまりそうな一般的な表現では
説得力に欠けるという指摘もされています。
ここでも大切になるのは、
その相談者だからこその方策になっているか
ということです。
論述試験では「文章表現・要約力」についても指摘
今回の資料では、
問1〜問4の内容だけではなく、
文章表現についても触れられています。
一文が長く冗長になっていたり、
主語と述語の関係が不自然だったりすることで、
書き手が何を伝えたいのか読み取りにくい解答も
一部に見られたとされています。
そして、
キャリアコンサルタントとして
要約力についても研鑽が必要
という指摘があります。
これは単なる文章テクニックだけの話ではないと思います。
キャリアコンサルティングでは、
相談者から多くのことが語られます。
その中から重要なことを捉え、
相談者の思いや状況を整理すること自体が、
キャリアコンサルタントに求められる力でもあります。
論述は「たくさん書けばよい」のではなく、
必要なことを的確にまとめることが大切
今回の論述試験の傾向から見えてくること
ここまで問1から問4まで順番に見てきました。
今回の採点官からのコメントを並べてみると、
それぞれ別の問題のように見えて、
実は共通するものがあります。
■ 問1
表面的な事象だけで相談者を捉えない
■ 問2
定型的な枠組みに相談者を当てはめて「証拠探し」をしない
■ 問3
一般的・抽象的な目標で終わらせない
■ 問4
ツールや一般的な方策を当てはめるだけで終わらせない
これらに共通しているのは、
「どの事例にも使える答え」を書くのではなく、
目の前の相談者の個別性を捉えること
ではないでしょうか。
相談者を「型」に当てはめない
これは論述対策を考えるうえで、
非常に重要なポイントだと思います。
論述答案を振り返るときに確認したい7つのポイント
今回の資料を踏まえて、
ご自身の論述答案を振り返る際には、
次のような点を確認してみてください。
- 相談者が口にした出来事だけで問1を書いていないか
- 相談者がなぜ悩んでいるのか、背景や思いまで捉えているか
- 問2で先に「自己理解不足」などの答えを決めていないか
- 相談者のできていない点を探す答案になっていないか
- 問2の問題把握と問3の目標がつながっているか
- 問4でツール名や方策を書くだけで終わっていないか
- 一文が長くなりすぎず、伝えたいことを簡潔にまとめられているか
まとめ|2級論述で大切なのは「その相談者だからこその答案」
2026年度前期の
「採点官、面接試験官から観た受検者の傾向」では、
論述試験について、
できていた点も数多く評価されています。
その一方で、
- 表面的な事象だけで捉える
- 定型的な枠組みに当てはめる
- 抽象的な目標設定になる
- ツールを使うこと自体が目的になる
といった課題も示されています。
共通しているのは、
相談者一人ひとりの個別性をどこまで捉えられているか
ということではないでしょうか。
キャリアコンサルティング技能士2級の論述対策では、
「この問題にはこの言葉を書く」
という形だけを覚えるのではなく、
この相談者は何に悩んでいるのか。
なぜそう感じているのか。
この相談者に必要な支援は何なのか。
ということを、
事例ごとに丁寧に考えることが大切です。
これから2級を受検される方は、
ぜひ今回の公式資料にも目を通し、
ご自身の論述答案と照らし合わせながら振り返ってみてください。
■ 面接試験について
今回の公式資料では、
実技(面接)試験についても詳しい傾向が公表されています。
面接試験では、試験官から
「表面的な関わり」や「面談の型を意識しすぎること」
など、非常に重要な指摘がされています。
面接編については、別の記事で詳しく解説します。