2026年度前期のキャリアコンサルティング技能検定2級について、
キャリアコンサルティング協議会から
「2026年度前期 2級実技試験 採点官、面接試験官から観た受検者の傾向」
が公開されました。
この資料は、実技試験の採点を担当した採点官・面接試験官へのアンケートをもとに、
受検者全体の傾向をまとめたものです。
資料の冒頭にも記載されているとおり、
個々の受検者の課題や合否理由を示したものではありません。
あくまで受検者全体の傾向として示されたものです。
ただし、実際に面接試験を見た側から、
受検者のできていた点と、どのような関わりが課題として見られたのか
が、かなり具体的に書かれています。
これからキャリアコンサルティング技能士2級を受検される方にとって、
面接対策を考えるうえで非常に参考になる資料だと思います。
今回は公式資料のうち
「実技(面接)試験の傾向」について、
資料と同じ順番で詳しく見ていきます。
■ 今回の資料は公式サイトから確認できます
今回取り上げる「採点官、面接試験官から観た受検者の傾向」は、
キャリアコンサルティング協議会の
「過去問題/学習情報」のページから確認できます。
公式サイトでは、過去に実施した直近3回分の検定試験が掲載されています。
また、2級の「実技の傾向」については前期のみ掲載と案内されています。
新しい試験回が追加されると過去の掲載範囲も更新されていきますので、
今後受検を予定されている方は、
参考にしたい資料が掲載されているうちに確認しておくとよいでしょう。
この記事で解説する内容
- 面接試験全体について|今回示された「最大の課題」
- 基本的態度|「型」を意識しすぎていないか
- 関係構築|定型的な質問になっていないか
- 問題把握|相談者の表面的な語りで止まっていないか
- 具体的展開力|問題共有の前に方策へ急いでいないか
- 今回の面接試験全体から見えてくること
2026年度前期・2級「実技(面接)試験」の傾向
今回の公式資料では、
面接試験についてまず全体の総評があり、
その後、
- 基本的態度
- 関係構築
- 問題把握
- 具体的展開力
の順番で、それぞれできていた点と課題が示されています。
特に今回注目したいのは、
面接試験全体について示された
「最大の課題」です。
面接試験全体|最大の課題は「表面的な関わり」
まず、できていた点から見ていきましょう。
公式資料では、
多くの受検者が傾聴の基本姿勢を身につけており、
相談者を尊重して、受容的・共感的に関わろうとしていたとされています。
また、相談者が言葉にした悩みを正確に捉え、
目標に向かって対話を進められるようになった受検者も
増えていると評価されています。
つまり、基本的な傾聴や受容的な関わりそのものについては、
できている受検者が多いということです。
その一方で、
全体の傾向として示されたのが、
最大の課題は
「表面的な関わりから抜け出せていない点」
という指摘です。
これは今回の面接試験の傾向を考えるうえで、
非常に重要な部分だと思います。
なぜ表面的な関わりになってしまうのでしょうか。
資料では、その一つの背景として、
面談の「型」を守ることに意識が向きすぎている
ことが挙げられています。
その結果、
相談者の感情の細かな変化を見逃し、
具体的展開では受検者側がリードしすぎてしまう。
そして、相談者の準備が整っていないにもかかわらず、
ツールの利用や周囲への相談などを
唐突にアドバイスしてしまう傾向も見られたとされています。
ここで考えたいこと
2級の面接練習をしていると、
- 関係構築をしなければ
- 問題把握をしなければ
- 問題を共有しなければ
- 20分以内に具体的展開へ行かなければ
ということが気になってしまうことがあります。
しかし、そのことばかりに意識が向くと、
目の前の相談者より「試験の進行」を見ながら面談してしまう
ことにもなりかねません。
今回の資料では、
相談者自身が気づきを得て、
前向きに行動できるようサポートする
「一緒に歩む支援」
が求められているとされています。
段取りのように面談を進めるのではなく、
目の前の相談者一人ひとりと向き合うことが大切だということです。
基本的態度|「型」を意識しすぎていないか
基本的態度については、
多くの受検者が相談者を尊重し、
真摯に向き合うことができていたと評価されています。
困難な局面でも落ち着いて対応し、
誠実に支援しようとする姿勢も見られたとされています。
さらに、言葉だけではなく、
非言語的な関わりも含め、
相談者が安心して話せる環境づくりができていた受検者も
多かったとされています。
その一方で、課題として挙げられたのが、
主に次の3点です。
■ 表面的な対応
事前に準備してきた自分なりの「型」を意識しすぎてしまう。
■ コンサルタント主導の進行
情報収集を優先して、矢継ぎ早に質問してしまう。
■ 共感的理解の不足
面談を進めたいというCC側の思いが先行し、相談者がついていけなくなる。
特に「型」については、
面接対策をしている方には一度振り返っていただきたいところです。
たとえば、
- 最初に感情を聞く
- 次に仕事について聞く
- 家族について聞く
- 周囲への相談について聞く
- 問題を共有する
- 最後に方策を出す
と、自分の中で順番を決めすぎてはいないでしょうか。
面談の基本的な流れを理解すること自体は必要です。
しかし、相談者が今まさに大切なことを話そうとしているのに、
「次はこの質問をしなければ」
と別の質問へ移ってしまえば、
相談者が話を深める機会を失ってしまいます。
相談者の「今ここ」での感情を理解しながら、
その場に応じて関わることが大切です。
関係構築|相談者が話し始めたのに、別の質問をしていないか
関係構築についても、
できていた点が数多く挙げられています。
面談の冒頭からリレーション形成への意識が高く、
相談者の価値観や経験を否定せず、
ありのまま受け入れようとしている受検者が多かったとされています。
また、うなずきや相槌などの非言語的な関わりでも、
受容的・共感的な態度を維持できている場面が多く、
必要なところでは内省を促す問いかけを行い、
対話を深める工夫も見られたとされています。
一方で課題となったのが、
受検者(CC)主導の展開です。
相談者が自分自身のことを語り始めているにもかかわらず、
情報収集の質問を優先して別の質問をしてしまい、
相談者の話を遮ってしまう。
その結果、
相談者が内省を深める機会を逃しているケースも
見られたとされています。
「まだ聞いていないこと」を探していませんか?
面談中、
「家族のことをまだ聞いていない」
「仕事のことをもっと聞かなければ」
「誰かに相談したか聞いていない」
と、まだ収集していない情報を探すことに意識が向いてしまうことがあります。
しかし、相談者が今話していることの中に
重要な手がかりがあるのであれば、
まずはそこを丁寧に聴くことが必要です。
「その時のお気持ちは?」を言えば関係構築になるわけではない
今回の資料には、
非常に具体的な指摘もあります。
関係構築について、
表情が緩んだ、笑顔が見られたといったことだけで
合意形成ができたと誤って捉えてしまうケースがあったとされています。
さらに、不自然な問いかけによって、
相談者に心理的な抵抗や戸惑いを生じさせるケースも見られたとされています。
その具体例として挙げられているのが、
「その時のお気持ちは」
という質問です。
このような定型的な質問を多用した結果、
相談者が返答に戸惑ってしまう場面もあったとされています。
もちろん、
「その時のお気持ちは?」という質問自体が悪いという意味ではありません。
大切なのは、
- なぜ今この質問をするのか
- 相談者がその質問に答えられる状態なのか
- そこまでの対話ができているのか
ということです。
公式資料でも、
その質問に相談者が答えられる準備ができている段階かどうかを見極める力
が求められています。
問題把握|表面的な語りの奥まで見られているか
問題把握については、
多くの受検者が、
相談者から語られる悩みや課題を適切に捉えることができていたとされています。
また、
相談者が大切にしている信念や「なりたい姿」などを捉え、
出来事の背後にあるさまざまな要因を把握しながら、
相談者と問題を共有できる場面も増えたと評価されています。
一方で、
問題共有について課題も示されています。
- 相談者の表面的な語りにとどまっている
- 内面的な葛藤の核心まで踏み込めていない
- 相談者固有の背景を見過ごしている
- CC側で仮説を立てても、言葉にしないまま面談が進んでいる
といったケースです。
たとえば「転職したい」という言葉だけで終わらない
相談者が
「転職したいけれど迷っています」
と話したとしても、
「転職するか、現在の会社に残るか」
だけが問題とは限りません。
なぜ転職したいのか。
なぜ迷っているのか。
何を失うことが不安なのか。
これから何を実現したいのか。
相談者自身もまだ整理できていないところまで、
対話を通して一緒に考えていく。
そのプロセスが重要です。
「誰かに相談しましたか?」を必ず聞いていないか
問題把握についても、
今回かなり具体的な質問例が挙げられています。
それが、
「このことを誰かに相談したことはありますか?」
という質問です。
資料では、
この質問を
必ずすることに決めているかのように聞いている受検者
がいたとされています。
ここも、この質問自体が悪いという話ではありません。
大切なのは、
「なぜ今、この質問をするのか」
です。
相談者の話を聞き、
そこから仮説を立て、
その仮説を深めたり確かめたりするために質問する。
つまり、
質問には相談者の話に基づいた意図や目的が必要
ということです。
「2級のロールプレイでは、この質問をするとよい」
という理由だけで質問してしまうと、
目の前の相談者ではなく、
覚えてきた面談の型に沿って進めることになってしまいます。
具体的展開力|問題共有の前に方策へ急いでいないか
具体的展開力については、
目標に向けて積極的に支援しようとする姿勢が見られたとされています。
また、無理に誘導するのではなく、
やりとりをきっかけとして、
相談者自身が今後の行動を選び、
未来へ向かえるような支援ができていた場面も評価されています。
その一方で、課題として挙げられているのが、
「問題把握の不足による停滞」です。
相談者の思いを十分に理解できていない。
問題の共有も十分にできていない。
それにもかかわらず、
方策を提示することを優先してしまう。
その結果、
実際の行動につながらない助言になり、
相談者が戸惑ってしまう場面も見られたとされています。
「具体的展開まで行く」こと自体を目的にしない
2級の面接対策では、
「20分以内に具体的展開まで行かなければ」
と気にされる方も多いと思います。
もちろん、具体的展開は重要です。
しかし、
相談者の問題を十分に把握・共有できていない状態で、
- ジョブ・カードを使いましょう
- 上司に相談してみましょう
- 家族と話し合ってみましょう
と進めても、
なぜその方策なのかが相談者と共有されていなければ、
相談者自身の行動にはつながりにくくなります。
準備してきた「提案」に相談者を当てはめていないか
具体的展開力では、もう一つ重要な指摘があります。
公式資料では、
「画一的な提案とプロセス達成への過度な固執」
が課題として挙げられています。
特定のツールや定型的な方策・支援策へ、
一方的に誘導しようとする傾向が見られたというものです。
試験であることを意識するあまり、
面接のプロセスを達成することが優先され、
相談者固有のニーズを尊重した支援ができなくなってしまう。
さらに、
事前に準備してきたと思われる提案が優先され、
相談者が置き去りになってしまう場面
も少なくなかったとされています。
「このケースなら○○」と先に決めない
「このケースならジョブ・カード」
「このケースなら上司への相談」
「このケースなら情報提供」
と、あらかじめ方策を準備しておくのではなく、
相談者との対話を積み重ねた結果として、
「この相談者の場合には、どのような支援が必要なのか」
を考えていくことが大切です。
今回の面接試験の傾向から見えてくること
ここまで、
- 面接試験全体
- 基本的態度
- 関係構築
- 問題把握
- 具体的展開力
と順番に見てきました。
それぞれ別の評価項目ですが、
今回示された課題にはかなり共通するところがあります。
■ 面接試験全体
表面的な関わりから抜け出せていない
■ 基本的態度
自分の「型」を意識しすぎる
■ 関係構築
相談者が話しているのに、情報収集の質問を優先する
■ 問題把握
表面的な語りにとどまり、定型的な質問をする
■ 具体的展開力
問題共有が不十分なまま、準備してきた方策へ進む
こうして見ると、
今回の面接試験全体を通して重要なのは、
「型」ではなく、目の前の相談者を見る
ということではないでしょうか。
「次に何を質問するか」より「今、相談者は何を語っているか」
2級の面接練習をしていると、
- 次は何を質問すればいいですか?
- どのタイミングで問題を共有すればいいですか?
- 具体的展開には何分くらいで入ればいいですか?
ということが気になると思います。
面接試験の構造を理解して練習することは必要です。
ただし今回の資料では、
面談の「型」を意識しすぎること自体が課題になる場合がある
ことが示されています。
相談者が今、何を話しているのか。
なぜその言葉が出てきたのか。
何を大切にしているのか。
何に迷っているのか。
今どのような気持ちで話しているのか。
「次に何を質問するか」を考える前に、
「今、相談者は何を語ろうとしているのか」を丁寧に捉える
そこが重要だと思います。
ロールプレイを振り返るときに確認したい8つのポイント
今回の公式資料を踏まえて、
ご自身のロールプレイを振り返る際には、
次の点を確認してみてください。
- 準備していた質問をすることが目的になっていないか
- 相談者が話し始めた内容を、別の質問で遮っていないか
- 情報を集めることばかりに意識が向いていないか
- 「その時のお気持ちは?」を定型的に使っていないか
- 相談者の表面的な訴えだけで問題を決めていないか
- 「誰かに相談しましたか?」など、決めた質問を機械的にしていないか
- 問題を十分に共有する前に具体的な方策へ進んでいないか
- 準備してきた提案へ相談者を誘導していないか
まとめ|2級面接で大切なのは「目の前の相談者」
2026年度前期の
「採点官、面接試験官から観た受検者の傾向」では、
面接試験について、
できていた点も数多く評価されています。
多くの受検者が、
傾聴の基本姿勢を身につけ、
相談者を尊重し、
受容的・共感的に関わろうとしていたことも示されています。
その一方で、
面接試験全体の最大の課題として、
「表面的な関わりから抜け出せていない点」
が挙げられています。
その背景を見ていくと、
- 面談の型を意識しすぎる
- CC主導で質問を進める
- 定型的な質問を使う
- 問題把握が表面的になる
- 問題共有が十分でないまま方策へ進む
- 準備してきた提案を優先する
といった傾向が見えてきます。
2級試験に向けて、
面談の進め方や質問を練習することは大切です。
しかし、
「試験らしい面談」を完成させることが目的ではありません。
目の前の相談者の話を聴き、
その人の思いや背景を理解し、
一緒に問題を整理する。
そして、
相談者自身が気づきを得て、
自分で次の行動を選んでいけるように支援する。
今回の公式資料にある
「一緒に歩む支援」
という言葉は、
2級の面接対策を考えるうえで、
非常に大切なポイントだと思います。
これから2級を受検される方は、
ぜひ今回の公式資料そのものにも目を通し、
ご自身のロールプレイと照らし合わせながら振り返ってみてください。
■ 実技(論述)試験について
今回の公式資料では、
実技(論述)試験についても、
問1から問4まで採点官から見た受検者の傾向が詳しく公表されています。
論述編では、
「証拠探し」のような問題把握、抽象的な目標設定、ツールを使うこと自体が目的化している答案
などについて詳しく解説しています。