# ペーシングと信頼関係

2022.4.14

 
 

01. ペーシングが、信頼関係構築を制する?

 
 
コミュニケーションには 「ペーシング」 という単語が存在します。

一般的には、話す速さや声のトーン(高低)、

言葉づかいのクセ等を相手のペースに合わせて話を聴くことで、

クライエントとの信頼関係が築きやすくなると言われています。

ペーシングがしっかりできていると、

クライエントにとっては自分のペースで話せる安心感が生まれ、

自然に発言が増え、思考の整理や信頼関係の構築(ラポール形成)を

後押ししてくれるため、聴く側は対話を進めやすくなるのです。

ペーシングを学んですぐの段階では、

クライエントがたくさん話してくれる効果を実感し、

「気持ちよく話せた」と感想をもらうこともあるので、

聴く喜びを感じるものです。

ところが実際の相談となると

「寄り添いながら聴くことを意識すると、

クライエントがたくさん話してくれるのはいいけれど、

クライエントの話に大半の時間が使われてしまって、

相談時間が足りなかった」

というケースが見受けられます。

クライエントに合わせる大切さはわかっていながら、

行動計画や解決に到達しないことに焦りを覚えて、

やや強引に提案や自分の行動計画に誘導してしまったり、

あるいは解決の糸口がつかめないまま相談が終了…

これでは、せっかく相談に来てくれたクライエントに申し訳ないと感じてしまう。

場合によっては自分の力不足を責め、自信がなくなり、

相談業務が辛くなる人もいるようです。

せっかくトレーニングを積んで身につけた能力が

活かされないのはもったいないことです。

悩みや課題を抱えるクライエントの幸せのために、

あなたにはもっと活躍してほしいと思います。

このようにペーシングを気にするあまり、

面談が思うように進まないお悩みは、

キャリアコンサルタント個々の能力の問題というよりは、

対話の組み立て方を変えてみることで先に述べたような

ペーシングスキルとあわせて用いることができれば、

うまくいくのではないかと考えています。

今回は、ペーシングを少し広く捉えて、

「話し手と聴き手双方が快適になるペーシングと信頼関係」について考えます。

 
 

 
 

02. ペーシングは多角的に行う

 
 
1項で、一般的に説明されるペーシングについて述べました。

ペーシングやラポール形成が上手な人は、

ペーシングという言葉を単に「テンポや歩調を合わせる」だけで終わらせず、

「一歩先のペーシング」をごく自然に実践しているという特徴があります。

私たち相談に携わる者は、

人生というドラマで主人公であるクライエントが輝くために

動き回るスタッフのような存在といえるのではないでしょうか。

例えのひとつとして舞台や芸術作品をつくるときの

場づくりやコミュニケーションは、

私たちの実務に通じるヒントがあります。いくつか取り上げてみます。
 
 
【1】 ペーシングが機能する要素
 
 
①役割分担を明確に認識する

作品ができるまで、主人公以外に複数のスタッフが関わっています。

それぞれの技術や経験、知識とあわせて、個性がぶつかり合い、

混じり合ったものが形になっていきます。

個性がぶつかり合うとは、喧嘩や争いがあるということではなく、

それぞれが役割・立ち位置を認識しながら

その制作の場に関わっているということです。

つまり、主人公の立ち振る舞いに迎合したり、同調したりして

ご機嫌を伺いながら作品をつくるということではなく、

互いがその立場や役割を認め合いながら

場のエネルギーを高めていくのです。

私たちが実施している相談の場も同様であり、

聴き手は相談を通して、クライエントが行動を起こし、

自信をもって幸せに生きることを支援する存在であると

認識したうえで相談に臨むことが求められます。
 
 
②今起きていることを観察する

調和のとれた演技や演奏では、

先頭に立つ主人公の存在が際立ち、

観客にとって心地良い瞬間になります。

その瞬間は、

他の出演者や場に関係するすべての人がその場を常に観察し、

それぞれの力を発揮する瞬間をつかむ

プロセスを積み重ねてきた結果ではないでしょうか。

「今自分にできることは何か」を考えて行動することは、

まさにペーシングが実践されている瞬間だと感じます。

このペーシングが場を整え、

主人公の立ち位置やふるまいをつくっていくのです。

相談を受けている際、

あなたはどこに視線と意識を向けているでしょうか。

事前情報から準備したメモを見ての相談は

決して悪いことではありませんが、クライエントと今、そ

の場で起きていることに耳を傾けてみましょう。

クライエントのちがう一面に気づくかもしれないし、

それが解決の糸口となるかもしれません。
 
 
③お互いを尊重する

先ほど①で、ペーシングは迎合や同調とは

ちがうものであると述べました。

これを尊重するという言葉で表現すれば、

「自分らしく」あることが認められているということです。

今同じ空間で作品に携わっている人はそれぞれが、

ちがう環境や状況を経験してこの場にいます。

それを認め合い、磨き合うからこそ、質の高い作品に近づいていくのです。

さて、私たちの相談ではどうでしょうか。

「あなたのために」と、強引な誘導や答えを押しつけてはいませんか。

思いやる気持ち・優しさも、度が過ぎると相手が自分らしくいることを奪い、

遠慮や萎縮を強いる場合があります。

思考や選択、基準がちがっていることはあたり前であり、

まちがいでも悪でもないことが認められた空間だからこそ、

安心して自分らしくいられるのです。

クライエントが自分らしくいられるためのペーシングを心がけましょう。
 
 
④自分の立ち位置を示す(確認、伝える)

自分の意見を言えず、ありのままの表現ができない場では、

それぞれが発するエネルギーが融合することはないし、

良い作品は生まれません。

同じように、面談で自分の立ち位置を確認し、

伝え、知ってもらうということは、

対話全体に及ぶペーシングになる点でとても重要です。

ここで大いに役に立つのが、「質問」のスキルです。

次に、質問を用いたペーシングについて考えてみましょう。
 
 
【2】 質問によるペーシング

質問には、クライエントの気づきや発見を促すという効果があるのですが、

ペーシングが上手な人は、質問上手でもあり、次のような場合に質問を用います。
 
 
①選んでもらう

対面での相談スタート時に、

クライエントにとって心地良い場づくりとして、

座る位置や角度を選んでもらう人は多いのではないでしょうか。

選ぶ自由には、それによって得る成果への責任も伴うのですが、

同時に、自分で決める心地よさと自信が手に入る効果も見込まれます。

相談内容だけでなく、

相談の進め方や時間の進め方についても選んでもらう質問をすることで、

聴き手の思い込みで相談を進めることや、

クライエントが置き去りになるのを防ぐことができ、

プロならではのペーシングであるといえるでしょう。

たとえば、

「今、Aと、B・Cの話が出てきたのですが、このあとの時間はどの話をされたいですか?」

「先ほど~の話をされていたのですが、今はちがう話題に進んでいます。どちらを優先したいですか?」

などの質問を受けたとき、

クライエントは話を聴いてくれて、自分の意向を確認し、

自らの意思決定を尊重してくれるあなたを意図せずとも信頼し、

心を開いてくれることでしょう。
 
 
②教えてもらう

クライエントの話からあなたが受け取った情報と、

今クライエントが感じていることを知り、

ズレがないかを確認する点で、

その後の展開につなげるペーシングを行うことができます。

「今何を感じていますか」「ここまで話して何に気づきましたか」

等の質問は、クライエントの考えをまとめたり整理したりするのに効果的です。

また、クローズドクエスチョンの多用はおすすめしませんが、

「違和感はありませんか」「このまま進めてよろしいですか」

といった確認の質問は、クライエントを

尊重する気持ちからのものだとすればそのままにせず、

丁寧に確認を行いましょう。
 
 
③気づいてもらうために伝える(フィードバック)

聴き手から見えるクライエントの状況を、

客観的事実として伝えることは、

クライエントが自分の今を知り、そのまま進んでよいのか、

あるいは他の選択肢を検討するのかを判断する等、

話の展開を助けるペーシングになると言ってよいでしょう。

伝える(フィードバック)際には、

「今私が感じたことをお伝えしてもよろしいでしょうか?」と

投げかけてクライエントの受け取る姿勢を整えてもらうことから始めてください。

そして、聴き手の評価や私的な感情を含めず、

客観的事実を言葉にするように意識しましょう。

その伝えたことを採用するどうかはクライエントが選び、

その選択が尊重されることは、既に述べたとおりです。

 
 

 
 

03. 「相談はクライエントのもの」という認識

 
 
ここまで読んでくださった方の中には、

「そんなに強い態度で相談に臨んでいいの?」

「クライエントの反応が不安…」

という気持ちを抱く方がいらっしゃるかもしれません。

これは、

『この相談が誰のもので、何のために時間を使って私たちのところに相談に来られるのか』

を考えれば、クライエントの反応を心配するよりも、

これまで述べてきた言動を優先すべきことは明らかです。

クライエントが自立して自分の人生を歩むために、

自分の聴き手としての立ち位置と使命を再認識しましょう。

場合によってはそれを明確な言葉で伝えてもよいでしょう。

 

 
 

04. 終わりに

 
 
今回は少し広い意味でペーシングを捉え、

信頼関係構築につなげる面談と関わり方を考えてきました。

ここにきて、ペーシングとは

「自分への信頼を得る、スムーズな相談時間をつくる」もの

というよりは、クライエントへの信頼を示すために行うものという気がしています。

自分への信頼は、クライエントへの信頼が伝わった後、

じんわりと聴き手に返ってくるおまけのようなものではないかと。

自分なりのペーシングをつかんだときが、

クライエントとの深い信頼関係が実現するときなのかもしれません。

 
 

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