第34回キャリアコンサルティング技能士2級論述試験 解答例

2025.8.13

第34回キャリアコンサルティング技能士2級論述試験解答例
問1
相談者は定年後、嘱託として働いているが、営業職から事務的な業務に変わり、会社も仕事も面白くなく、やりがいも感じられない。もう辞めてしまった方がいいのかなと悩んでいる。定年前には、自分は以前と同じようにやっていけるだろうと思っていたが、今は何もかも変わってしまい、乗り越える気力もなくなっている。長年会社のために頑張ってきたのに、今まで積み重ねてきたことは誰の役にも立たないのかと思う。若手には助言を拒まれ、居場所をなくした気分で、もう潮時かなとも思う。最近の若手は何を考えているかも分からないし、もうどうしていいかわからないことが問題。

問2
①「ただの事務…」「乗り越える気力も…」等の発言から職務・役割等の変化による自己効力感の低下が感じられる。
②「今まで積み重ねてきたことは…」等の発言から経験や強み等の自己理解(主観的自己)の不足が、また、「良かれと思って」のアドバイスを若手社員から拒まれたこと等から、自分が相手にどう映るか(客観的自己)についての理解の不足が見られる。
③「以前と同じようにやっていける…」等の発言から、嘱託としての期待役割 (の変化)と、変化を踏まえた役割発揮・貢献のあり方に対する理解が不足していると考えられる。

問3
①目標
1.低下している自己効力感の回復を図ることで、「乗り越える気力」を取り戻すこと。
2.自己理解(主観的・客観的)を深めるとともに、嘱託としての期待役割(の変化)を明確にすることで、現職における役割発揮や貢献の可能性が明確になること。
3.相談者が納得のいく働き方について主体的に意思決定できるようになること。
②方策
1.「会社も仕事も面白くない」「居場所をなくした気分」といった相談者の無力感・喪失感を十分に受け止め、感情表出を促すことで信頼関係を構築する。
2.相談者が長年会社のために頑張ってきたことを承認しながら、経験の振り返りを行う。ジョブ・カードを用い(本人同意の上)、正社員時代の成果や「新規顧客開拓が得意」といった強みを整理し、主観的自己理解を深めるとともに自己効力感の回復を図る。また、若手社員や上長からのフィードバックを振り返り、自身の存在や関わり方が周囲にどう映っているかを整理し、客観的自己理解を促す。
3.上長や若手社員とコミュニケーションを取り、今の自身に何が期待され、求められているのか、以前との変化も含め期待役割について理解を深める。
4.2,3を合わせて、今これからの役割発揮や貢献の可能性を検討する。必要であれば、ロールモデルとして、嘱託で「生き生きと働いている人」からも情報収集を促す。
5.以上より、相談者が今後の働き方について主体的に意思決定し、今後も自身が誰かの役に立っている実感と居場所を得て働いていけるよう支援する。