1.　ケース概要

2.　調べておくべき基礎知識

3.　相談者の背景にあるテーマ

4.　感情キーワードの深掘り

5.　キャリアコンサルタントとしての視点

6.　ロールプレイでの問いかけ方向性

7.　まとめ

01.ケース概要

  相談者は大学中退後、アルバイト経験を経て、 現在は物流会社の倉庫でアルバイトとして勤務して3か月目。

過去には正規雇用も経験しているが、この2年は非正規が続いている状況。
「安定した仕事に就きたい」と考えている一方で、
現在の会社の正社員登用試験に受かる自信がなく、
仕事自体も「きつくて続けられるのか不安」と感じている。

「今後どんな仕事を選べば良いか」「正社員になれるのか」
という不安と葛藤が中心にあるケースです。

02.調べておくべき基礎知識

このケースでは、相談者の背景理解のために以下の知識が役立ちます。

1. 非正規雇用が続く人の心理
・安定したいが自信がない
・職場が合わなかった経験が蓄積している
・「どうせ続かないのでは」と自己不信に陥りやすい

2. 自己効力感（Bandura）の低下
自分の能力を信じられず、挑戦を避けやすくなる心理。
試験への不安、継続への不安と結びつきやすい。

3. 職場定着に影響する要因
・仕事内容のきつさ
・職場の人間関係
・負荷に対する体力・メンタル
・役割期待や職場文化

4. キャリアアンカー（Schein）
30代前半は「安定」「生活基盤」「自分に向いている仕事」を求めやすい時期。

こうした知識は、相談者の背景理解を助け、
ロールプレイでの問いかけの的を絞ることに役立ちます。

03.相談者の背景にあるテーマ

この相談には、以下のテーマが複合的に絡んでいます。

1. 経験の断片化
・大学中退
・アルバイト中心の経歴
・短期・日雇いの繰り返し
→ キャリアの一貫性が持てず「続けられる自信」が持ちにくい。

2. 自己効力感の低下
・登用試験に受かる気がしない
・仕事を続けられないかもしれない
→ 自己評価が厳しく、「どうせ無理」という思考に傾きがち。

3. 安定したい気持ちと不安の同居
「正社員になりたいけれど、自信がない」という
二律背反の状態が続いている。

4. 仕事理解と自己理解の不足
・どんな仕事が自分に合うのかわからない
・物流の仕事が合っているのか判断できない
→ 自分の強み・価値観を把握できていない可能性。

04.感情キーワードの深掘り

相談者の発言から拾うべき感情キーワードは以下です。

自信がない
・試験
・仕事の継続
・今後の働き方
→ 自己効力感の低さが中心テーマ。

不安
・今の仕事に向いているのか
・これからどうすれば良いのか
・「また辞めてしまうのでは」という恐怖

安定したい気持ち
・職歴が安定しないことへの焦り
・年齢的な節目
→ 今後の生活基盤への危機感が背景にある。

ロールプレイでは
「その気持ちはどこから来ているのか」
を丁寧に扱う姿勢が求められます。

05.キャリアコンサルタントとしての視点

この事例で押さえておきたい視点は以下の通りです。

1. 自己効力感の低さが行動を妨げている
→ 過去の経験、失敗体験、短期離職の繰り返しが影響。

2. 職務理解が浅く、働き方をイメージできていない
→ 継続できるか不安なのは、仕事内容や適性の不明確さも原因。

3. 安定志向と怖さが同居している
→ 「正社員になりたいけど自信がない」という二重構造。

4. キャリアの棚卸しが必要
→ 何ができて、どんな価値観があり、どんな働き方を望んでいるか整理が必要。

5. 支援の方向性は“自己理解”と“選択肢の現実化”
→ 短期で決めるのではなく、本人の納得と安心感を育てるアプローチが重要。

06.ロールプレイでの問いかけ方向性

ロールプレイ本番で意識したい問いかけは次の通りです。

1. 気持ちの整理につながる問い
・自信がないと感じる具体的な場面はどんなときですか？
・試験に対して、どんな不安があるのでしょうか？

2. 過去の経験の捉え方を聴く
・過去に続けられた仕事はどんな点が良かったですか？
・その中でできていたことは何がありますか？

3. 安定したい思いの背景
・安定した働き方とは、どんな状態をイメージしていますか？

4. 仕事の継続性に対する不安の正体
・続けられないかもしれない、と感じた理由は何ですか？
・どんな環境や条件なら続けられると思いますか？

5. 選択肢の現実化を助ける質問
・正社員登用に向けて、できそうな準備は何がありますか？
・他に気になっている仕事や働き方はありますか？

07.まとめ

事例2人目は、
「安定したい気持ち」と「自信のなさ」「不安」の間で揺れているケース です。

ポイントは以下の通りです。

・自信のなさの背景にある“経験の積み重ね方”を理解する
・安定志向と自己不信の両方に寄り添う
・仕事理解・自己理解を深める対話が不可欠
・選択肢の現実的な整理を支援する
・本人の安心感を育てるアプローチが求められる

ロールプレイ本番では、
・感情の扱い
・自己効力感の理解
・納得できる選択の支援
ができるかどうかが評価されます。

今回の整理をもとに、ロールプレイの質をさらに高めていきましょう。